年末になると「損出し節税クロス」という言葉がよく耳に入ってきます。
株式投資の譲渡益(売買によって得た損益)の税金は1月〜12月の期間で決定するので、含み損がある株を年末に売買する事で、税金を意図的に調整する事が可能です。
このテクニックを損出し節税クロス取引なんて名前で言われていますが、イマイチやり方やメリットが分からないという問い合わせがありましたのでご紹介させて頂きます。
知っておいて損はないテクニックです!
損出しクロス取引とは?
損だしクロスは以下の両方の条件を満たす方に限り有効な税金先送り手段です。
- 今年確定させた利益がある
- 含み損を抱えている株を保有している
両方の条件を満たす方は年末に含み損の株を売却して、買いなおす事によって持ち株は維持したまま、今年支払う税金の調整ができます。
ただ売却するだけなら損切りになりますが、損だしクロスの場合は基本的に同じ銘柄を同じ株数買いなおします。
損出しクロス取引のメリット
損出しクロス取引の目的は税金の先送りですが、損出しで還ってきた税金を加えて購入すると最終的な利益を増やす事ができます。
例を挙げて説明させて頂きます。
1単元10万円の株を10単元持っているとします。この時の価値は100万円です。
1単元の値段 | 単元数 | 価値 |
10万 | 10株 | 100万 |
この株が1単元5万円まで値下がりしたとします。そうすると価値は50万円まで下がります。含み損は50万円になります。
1単元の値段 | 単元数 | 価値 | 含み損 |
5万 | 10 | 50万 | 50万 |
仮に今年の株式による利益が100万円だったとします。この場合、税金は約20万になります。
しかし先ほどの含み損を確定させた場合、今年の利益は50万円に下がるため、税金は10万に下がります。
特定口座(源泉徴収あり)の場合は、この時点で払いすぎた税金の10万円が戻ってきます。
そして同じ株、1単元5万円の株を50万円分+戻ってきた税金10万円まで買います。すると…
1単元の値段 | 単元数 | 価値 | 含み損 |
5万 | 12 | 60万 | 0 |
- 今年の税金が減る
- 含み損がなくなる
- 戻ってきた税金のお金を加える事によって株数が増える
という感じになります。
仮にこの株が1単元あたり20万円まで値上がりしたとしましょう。
損だしクロス取引をせずに持ち続けた場合、以下のように利益は100万円になります。
[box class=”yellow_box” title=”損だしクロスをしなかった場合”]
1株の値段 | 株数 | 価値 | 利益 |
20万円 | 10 | 200万円 | 100万円 |
[/box]
次に損だしクロスして戻ってきた税金で買い増した場合です。なんと利益が140万円になります。
[box class=”green_box” title=”損出しクロス取引をした場合”]
1株の値段 | 株数 | 価値 | 利益 |
20万 | 12 | 240万 | 140万 |
[/box]
損だしクロスをしなかった場合と比べて40万円も利益が増えます。
損出しクロス取引のやり方
損出しクロス取引のやり方は同じ営業日に①信用買い②現物売りをして、翌営業日に③現引きの3ステップです。
確実な方法は市場が開く9時AMまでに、信用成行買いと現物成行売りを同じ株数、注文しておきます。
これで売りと買いが同じ価格で取引されます。翌営業日に現引きをして完了です。
損出しクロス取引の3ステップ
- 市場が開く9時AMまでに信用買い
- ①と同じ時間に同じ銘柄を現物売り
- 翌営業日に現引き
取引のやり方自体は優待のクロス取引と同じ方法ですね。
損出しクロス取引のデメリット
損出しクロス取引はする銘柄は基本的に値上がりすると思っている銘柄を対象に行います。
値上がりしなさそうであったら損切したほうが良いですからね(配当、優待目的なら別ですが…)。
損切する場合や保有し続ける場合と違って、売りと買いの取引が増えるので売買手数料が余分にかかってしまうのがデメリットですね。
あと株数が多い方だと仮装売買といって相場操縦が疑われる違法売買になる可能性もあるそうです。
あまり当てはまる方はいないと思いますが、何千万、何億単位の価格の損出しクロスをする場合は要注意です。
含み損がある方は損出しクロス取引をしてみては?
という事で損出しクロス取引のご紹介でした。
損出しクロス取引をするとポートフォリオの含み損がなくなるため、精神衛生上にも良いです。
株式投資はメンタルが大事ですので、含み損をいったんなくして来年の投資に臨んでみては?